着物の格と夏の素材

夏着物の魅力は、なんと言っても涼感あふれる素材感にあります。

透かしの入った絽や紗の染物や、強捻糸を使ってシャリ感を出した夏大島や夏塩沢などの夏紬。麻や麻と綿の交織や、綿でも太さの異なる糸を織り込んで凹凸をつけた紅梅生地など、バリエーションの豊富さも楽しみです。

その種類の多さが、いつ、どれを、どこに着れば良いのか?という混乱の元でもあります。

6月から9月の四ヶ月の間に単衣から盛夏、そして単衣と変わります。最近の気温の高さで、5月と10月も単衣、ということも珍しくないので、そうすると夏の様々な素材を楽しめる期間が六か月にもなります。

夏にしかない用いない素材は多く、そのアイテムや時期も多種多様なのですから、悩ましいのも当然です。本格的な夏が来る前におさらいをしておきましょう

単衣のフォーマルは絽縮緬、絽などの絹の夏用白生地で、訪問着や付下げ、色無地などを染めたものになります。

格としては、その次が夏牛首や夏大島等、夏紬の後染のもの。

続いて縞や絣の夏紬(絹織物)、麻織物、最後に木綿になります。

夏の着物 柔らかもの編

絽縮緬6と9月の単衣の時期の絽織り
絽目の間隔によって、二本絽、三本絽、五本絽などがあり、二本絽、三本絽などが盛夏向きで、五本絽、七本絽は単衣にも使います。
斜めに捩りを入れた織り方で全体に透け感があります。紗は、盛夏用の生地になります。

画像のある絽・紗・羅の違いこちらこちらで。

夏の着物 紬編

生紬生糸についているセシリンという成分を残して精錬し、シャリ感のある生地に織り上げたもの。透け感によって単衣~夏に着用します。
夏紬各地方で織られている産地紬を撚りを掛けた糸で織り上げたもの。絹上布や絹芭蕉などと呼ばれるものもあります。夏琉球絣、夏大島紬、夏黄八丈、明石縮みなど。
麻もの、上布麻糸の作り方により手績み苧麻で織られた上布各種。(詳しくはこちら)ラミー糸を使った 小千谷縮、近江上布など。

夏の帯 素材別

帯はさらに素材や織り方が増え、どの着物にどの帯を、いつ合わせてたらいいのか迷います。金銀の入らない洒落物限定で仕分けてみました。

シナ布、藤布などの自然布使用時期は、初夏の単衣~秋の単衣まで。元々は一年中使われていた素材ですが、現在では、そのザックリとした風合いが冬にそぐわないとされています。柔らか物には合わせず、夏紬以下の格のものに。
綴れ、絽つづれ 綴れ織り、という織り方には格があり、柄も金銀の入った格調高いものが多いので、本来は柔らか物向きです。後染の夏紬や夏お召、無地の夏紬などには合います。
複雑で精緻な織りが魅力です。羅の織りだけで表現された無地の八寸はフォーマルから上布までオールマイティに使え、1本あると便利です。袋帯や後染にされたフォーマル用もあります。羅(もじり織り)で柄が織り出された八寸は、カジュアル用として夏紬~麻の着物にも。
絽や紗の後染め 絽は、生地が薄く九寸になるので、八寸の紗より格が高くなります。 光沢のある絽織りは柔らかもの向きです。生紬や紬地、変り織りのものは、夏紬や麻にも。 織りの帯にはない柔らかさが、夏きものの硬さやハリを和らげてくれます。染の技法も友禅、無線友禅、ロウケツなど様々な表情を見せてくれますので、帯を主役にしたコーディネイトも楽しめます。
博多帯 夏の紗献上は7,8月限定ですが、透けない、普通の博多献上は一年中使えます。小紋から浴衣までOKです。 お太鼓だけでなく、角出や後見結びなど結び方で楽しめれば上級者です。