米沢よりずっと奥にある白鷹で織られる白鷹お召は、独特のシボがある紬のお召で、絣の北限と言われています。

白鷹お召の絣は、板締めという技法で薄い板に溝を彫り、その板に糸を巻きつけたものを20枚ほども重ねて、面万力で締め上げた上から熱い染料を注ぎかける、というものです。

絣の柄をそのまま板に彫るわけではなく、絣柄の点と点が経緯で重なって柄になるように分解して板の上に設計されて彫られます。板の厚みも計算に入れて設計されるのですが、この板に溝を彫る職人さんが居なくなり、今は宮大工さんが苦心して彫れるようになった方が一人だけいらっしゃるそうです。

白鷹お召の絣柄は、越後上布や弓浜絣に見られるような絵絣ではなく、亀甲や十字を並べて表されるものです。武士にも好まれたというのが頷ける、きっちり感のある端正な柄になります。

彫られた板は糸を巻きつけて重ねられ、万力で締め上げると大きなブロックのようになります。これに、もうもうと湯気の上がる染料を注ぐのですが、「ぶっかけ」と呼ばれるこの工程、染め担当のおじいちゃんは「ぶっかけなんてしないで丁寧に大切に染めるんですよ。」とおっしゃいます。でも、お風呂場みたいなタイル貼りの染め場で、均等に染めるためにブロック状の板の束を転がしながら染める様は、「ぶっかけ」と呼ぶにふさわしい光景でした。

染められた糸は、板を外すと彫られた溝の凹凸によって染め分けられた絣糸になります。お召ですから、右撚りと左撚りの二種類の撚り糸と絣糸との3種類の緯糸で絣合わせをしながら、独特の高機で手織りされます。

広めに織られて、お湯で揉んで縮ませることでシボの立ったサラリとした風合いが生まれます。