今日も暖かかったですけど 明日はさらに気温が上がるようです。
横浜予想最高気温20度。
もう、単衣でもいいですね~~

今現在、外出自粛で着物でお出かけがしにくい状況ですが
おうち着物、楽しんでみませんか?
日常がちょっとだけ特別になりますよ。

そうこうしている内に お出掛けができるようになる頃には
夏になってるかも。
今年の夏は早く来そうですね。
夏、といえば麻です。そこで今日は麻のお話。

麻の特性として 他の繊維に比べて 保湿性が低く 放熱性に優れているので
麻を着ると 湿気が内にこもらず 体温を放熱するので涼しく涼感を得られるのです。

夏の憧れは上布。
越後上布、能登上布、近江上布、宮古上布、八重山上布。
上布とは読んで字のごとく「献上」の上であり「上質」の上なのです。
かつては 上布の下に中布、下布があり
経糸の本数や糸の原料で区別されていました。
中布、下布は大麻や葛、藤などで織られた庶民というか農民の布だったのです。
上布は本来 麻織物ではなく 苧麻織物を指します。
苧麻と麻は 糸になると似ていますが 糸の細さが違います。
それは 植物自体が 麻が桑科の1年草なのに対し、苧麻はイラクサ科の多年草なのです。

苧麻を糸にするためには まず 茎に傷が付かないよう大切に育てます。
福島県の昭和村で 焼畑をして種を蒔き
夏に2メートル程に育った苧麻を刈り取り、
水に漬け、苧引き(うーひき)という苧麻の繊維のみを残して 皮や不要物を取り除く作業をします。
苧引きされた繊維を束ねて陰干ししたものが 青苧(あおそ)と呼ばれるもので
この状態で 越後などの上布の産地と取引されます。
青苧を爪の先で細く細く裂いて 裂いた糸先を撚り合わせて1本の糸にすることは
苧積(うーつみ)という大変な労力で
1反分を同じ太さの糸に裂き、繋いでいくには数ヶ月かかります。

それだけの労力の上で織り上げられた布ですからお値段も上等です。
昔から、高貴な人のみが着ることが出来る高級品なのです。

手績みの苧麻は艶やかで毛羽がなく美しい糸です。 
これに対して 苧麻の繊維を細かく砕き機械で一定の方向に揃えて
強い撚りをかけることで糸状に形成したものがあります。
なぜか 着物業界では 絹紡紬糸の麻版のようなこの糸をラミーと呼びます。
(絹紡紬糸とは 屑繭や機械引きの糸の残りなどを煮て
 綿状にしたものから機械で紡績した紬糸のことです)
兼価ですが 手績みの麻に比べて 摩擦に対してケバ立ちがしやすい性質があります。
小千谷縮や綿麻、みやこ麻織りなどに使われています。
ラミーは一度砕いた麻の繊維を固めて糸にしたもので
いわば 屑肉を寄せ集めて成形したサイコロステーキみたいなもの?
対する 手績みの苧麻は国産黒毛和牛のヒレみたいで
長年使ってもケバ立ちやスレが出ません。

もちろんラミーにはラミーの良さがあって
普段にどんどん着て 自宅でガシガシ洗うのに惜しげが無く 夏の普段着物として最適です。
上布は 夏の大事なお洒落着物。

ラミーにしろ 苧麻にしろ 暑い夏の頼れる味方です。

その夏物が今 危機を迎えています。
元々 夏着物の需要は多くなく、生産量もギリギリです。
余分は作りません。
今 自粛続きで売上が伸びず、先の見通しがつかないので
売れるか分からないものを作るかどうかメーカーは悩んでいます。
120番手の麻襦袢も追加は織らないそうです。
今年はあと5反のみ、入荷します。気になる方はお問合せください。


綿麻に苧麻に裂き織の八寸帯。
苧麻に裂き織、という発想が秀逸。私、考えたこともなかったですー
さりげなく、とってもお洒落。
帯留にえどいろさんの 手作り感の市松です。

お太鼓はこんな感じで 裂き織のアクセントがいい味です。

帰り際に元町厳島神社。上の方にお月さま。
来年のお月見はみんなでワイワイしたいですね。着物でね。

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