2022年春 じざいやのお品の委託販売 始めました

羽織談義 歴史と種類

きもの暮らし

羽織は、武将が着た陣羽織や室町末期に小袖の上に着ていた胴服が原型とされ、元々男性のものでした。

江戸時代は「男のもの」と定められて、女性は着ることを許されませんでした。

ですから、現代でも、男性の正装に羽織は不可欠です。

一方、女性の羽織の歴史は、江戸時代の延享年間の「辰巳芸者」といわれています。「辰巳」と言うのは、江戸城から見ての方角で、場所でいうなら「深川芸者」です。

下町のきっぷの良いお姐さんたちが男勝りに羽織を着た姿が江戸町人の心を捕らえたのです。

戦後、物がない時代から、絵羽羽織や無地羽織に紋を入れて、それを小紋の上に羽織って格を上げる、ということが始まりました。

私の子供時代、入学、卒業式に母は小紋や色無地の上に黒い紋付の絵羽羽織を着ておりました。

あの頃は定番仕様でしたが、羽織で下に着ている着物の格を上げる、なんてことは近頃はあまりしなくなっています。

私より下の年代の方は(40代以下?)はご覧になったこともないかも・・・ 

昔より羽織の存在感が薄くなってきたのも事実です。

着物が普段着からフォーマル・礼装になってしまい、道行などのコート類に押されて羽織が少なくなってきたこと、

日常の防寒具としての羽織の必要性が薄くなったことと、

普段着によくある腰丈の、いわゆる茶羽織はカジュアルというかホームウェア感覚で、現在の着物の着方にはそぐわなくなってしまったこと、

あたりが理由でしょうか。

とうことで、女性の羽織は、比較的歴史の浅いものです。それゆえか、アイテムとしての位置づけがまばらで悩ましいものにもなっているようです。

今の羽織は、あくまでもお洒落で趣味性の高いカーディガンやジャケット、コートの感じでお召しください。

羽織をお好きな方は、関西よりも関東に多いような気がします。特に長羽織はクラシカルな山の手の奥様気分でしょうか。

腰を覆っても膝より短い羽織は、活動的で若々しい雰囲気があります。

羽織の種類を分けてみました。ご参考までに。

本羽織
膝下以上の丈があり、柄付けは黒無地に紋付、もしくは 訪問着的な絵羽柄で背縫いを跨いで柄が繋がっています。
紋付、色紋付、訪問着などに、礼装として着ることができます
紋が付いていると下に着る着物が紋無しでも格を上げることが出来ますが、上げても「略礼装」まで。
昭和30年代に流行った黒羽織ですが、現在ではこの着方は少数になってしまったためほぼ作られておらず、古着・アンティークで出回っています。レトロ感があります。
中羽織
現在、普通に羽織と呼ばれているもので、丈は様々、小紋や紬などに合わせます。
柄も無地、縞、小紋柄など、生地もお好みで。高級洒落着として絵羽柄にしたものもあります。
フォーマルには合わせらせません。もし、フォーマルで着る場合は往復の道中のみで出先では脱ぎます。
紋はつけません。付ける場合は家紋ではなく洒落紋を。
茶羽織
普段の日常着としての羽織。腰が隠れるだけの短い、塵除けとして活動的で日常的な生活着です。
戦後、ものがない時代に一反から2枚の羽織を仕立てたため「マチ」が無く、お尻の途中位までの丈です。
母の箪笥や古着として見かけます。
総絞りの短い羽織は可愛いです。ボレロやベストみたいな感覚でコーディネイトするのも楽しいです。