3月中旬でも暖かくて動くと汗ばむほどの日があります。
3月、当然袷の季節ですが、20度超えたら単衣を視野に入れても良いと思います。暑かったら無理しないで、単衣を着ちゃいましょう。
この時期の単衣、フライングなのを自覚して、
「袷の時期、って知ってるけど 暑いから着ちゃってますよー」という確信犯的な着方です。
5月は確実に単衣が定着しましたが、3,4月の単衣の市民権はまだ低いです。
季節先取りは着物より帯、小物から、とはいえ、この場合の単衣には、少し気を使います。
3,4月の単衣に合わせる帯や小物は、袷用でも薄めで軽やかなもの、透け感の無いものを選びます。
5月になれば、自然布などのザックリしたものもしっくりくるようになります。
6月なら、透ける絽などの夏帯でオッケーです。
ものの本には「単帯」という名称があったりします。
単衣の時期に締める帯として芯を入れない八寸帯を指している場合と、お太鼓の引返しもない、お太鼓が本当に一枚だけ、手先と垂れ先のみを三つ折りにかがった帯を指している場合があるようです。
このお太鼓も一枚だけの帯は、現在は献上博多帯くらいしか見ませんが昔は普段帯として存在しました。
ただ、今どき、単衣帯と言えば、八寸名古屋帯を指すと思って良いでしょう。
ところがこの八寸帯、実はなかなか曲者です。
紬に合わせる帯として気負わず使えますが、芯を入れずに裏も付けないので、帯の生地自体がしっかりしていなくてはなりません。
お太鼓が ふにゃり、としてしまっては頂けませんから。(生地質によってはお太鼓の裏だけ芯をいれたりします。)
生地がしっかり、ということで選ぶと、素材によっては絨毯のように分厚く重厚で、とてもこの時期に締められるものではありません。
八寸帯は、質感によって使う季節が分かれるのです。
もこもこなら冬っぽい、透け透けなら夏っぽい、というのはすぐに判ります。
難しいのは、透けるのか透けないのかはっきりしない麻やシナ布、藤布などの自然布と呼ばれる生地です。
自然布は、絹や木綿が登場する前の庶民の普段着で一年中着られていた、というか、それしか着るものが無かった・・・というものです。
ですから、冬に締めたら絶対いけないとは言えませんが、今の世の中では選択肢があるので、冬以外に締めるのが良いでしょう。
自然布の中でも繊維の太い藤布やシナ布や、麻でも密度の高い透け感のないものは、春の単衣の時期から夏を経て秋の単衣まで。
芭蕉布や、麻でも繊維の細い透ける質感のものは九寸にして裏を付けることが多いですが、糸の繊細さに涼感を求めるものですから盛夏に締めます。
絹もので、羅ほど透けていれば盛夏なのは判りますが、花織に絽を併用した花倉織や花絽織などは九寸で、季節が微妙なものも多くあります。
帯芯を入れることで透け感に変化が出ます。
じざいやでは、白や薄いブルーなどの芯を入れて涼感を高めれば盛夏用に、ピンクや黄色を入れて単衣から締めれるように、と帯芯の選び方で調整することもあります。
単衣の着物に合わせる小物について。
帯揚げは、3月はまだ縮緬。4、5月になって浜縮緬、綸子、変わり織など。
本来の単衣の時期の6月の帯揚げとして絽縮緬、楊柳が出てきます。
この頃の暑さでは6月は絽を使っても違和感がないので、絽縮緬、楊柳は5月に前倒しで許されると思います。そもそも絽縮緬、楊柳はなかなか売ってませんので塩瀬でOKです。
帯締めは、季節に合わせて太さ、色目が似つかわしいものなら特に夏用に組まれたものでなくても大丈夫です。
今頃からの早めの単衣に。残糸使いの大島紬に首里花織。
5月に嬉しいサラリと涼しい本塩沢に紙布の帯。
今日の着物美人さんは、桜が優しい雰囲気の山本由季さんの帯のMY様。
桜の小紋に総疋田を織で表現した袋帯のAM様。帯、絞りじゃなくて織ってあるんですよぉ~