じざいやの人気商品に羽織があります。毎年、オリジナルで作っています。

現在は、3か所の染元でそれぞれ趣の異なった羽織を染めてもらっています。その中の1軒で「桶絞り」という技法を得意とする染元があります。 

現在、桶絞りが出来る職人さんは2人しかいないそうで、桶絞り入りの羽織をお願いすると染に半年かかります。絞りがなければ2か月なんですけどね・・・ なので 桶絞りのデザインの時はかなり前からお願いしないとなりません。 

手間暇かかって値段も上がる桶絞りなのですが、一見、いわゆる絞りの柄とは違うので、「桶絞りって何?」と聞かれることも多いのです。

まず、絞りとは、染めずに残したいところに施す防染の技法です。絞りにもいろいろあって、細かい粒を1つ1つ巻き上げていく鹿の子絞りを始め、くも絞り、ほたる絞り、柳絞りなど、柄を作る絞りがあります。

一方、「桶絞り」は、柄を作る絞りとは異なり、面で地色を染め分ける技法です。染めたい部分を桶の外に出し、染まっては困る部分を桶の内側に密閉してしまうのです。桶の縁が色の境界線になるわけで、針で生地を桶の縁に固定しておいて蓋で押さえて密閉します。 

富山の鱒寿司のように角材を当てて、ロープでギチギチと締め上げていきます。この締め上げた桶をそのままドブンと染料に漬けてしまうのですから、よほど厳重に密閉されていなければいけません。桶と生地のきちきちの間に、畳んだ和紙を叩き込む念の入れようです。

桶絞りの職人さんの仕事が終わると、次に、染めるのは染め屋さんの仕事になります。染料の温度は90度ほどに熱せられていて、桶を回転させながら満遍なく染めていきます。手早くしないと、熱で桶の中の空気が膨張して桶が破裂する恐れがあるのですが、この空気の膨張が入り込もうとする染料を押し戻す役目もしてくれています。 

熱い染料で濡れている状態で、反物が乾いた時に注文通りの色に染まっているかを見極めるのも職人さんの力量です。 

単純な道具から巧緻なものを生み出す、まさに職人芸です。着物を作る工程のいたるところで発揮されていますが、その苦労が表に出ることはありません。それを伝えるのも呉服屋の務めの1つだと思っています。 

かつては、振袖などの豪華な着物にも多用された桶絞りですが、今ではほとんど見ることが出来ません。これから見られなくなる技術が増えていくことは確実です。今のうち、いろんな技をしっかりと見ておいてください。

じざいやの羽織についてはこちらをご覧ください。桶絞りの羽織もあります。