紬で初めて人間国宝になった故 宗廣力三氏が創始した郡上紬はシンプルな縞や格子柄から出発しましたが次第に緻密な図案をもとに経緯絣を加えた、新たな意匠へと発展していきました。それは、斜め格子から水文、立湧文、丸文、半円つなぎ文ととどまることなく複雑に展開する一方で色は静かな単色の濃淡へと抑制されていきます。

現在の郡上紬は 偶然性や絵画性、華美な装飾性とは無縁の必要な色と織りを厳密に求めた結果ですが整然性に富み、謙虚で飽きのこない作品とっなっています。

画像では あまり分からないのですが実際に見て まず驚くのが 糸質の良さから来る内からの光沢です。綸子等の光沢とは違い、糸そのもの持つ光沢です。

厳選された春繭の糸は 国内では希少になってしまい、今では 限られた作家さんのみに手渡される糸です。その糸を丁寧に染める。独特の染めは 括っては染め、解いてはまた括り、別の色に染める。一見 単純な縞・格子に見えたものが緯糸をたどって行くと 知らぬ間に別の色になっている不思議。ただの縞・格子ではなく 絣ゆえのマジックです。

絵絣や意匠絣ではなく単純なのに 深みと力があるのはそれだけ手間隙をかけているから。藍や草木で深くしっかりとした色に染められた郡上紬は土っぽさを感じさせるほどの素朴で力強い紬ですがいざ 帯を乗せてみると 包容力のある優しさを見せます。

そして まとった時の暖かな軽さ!真綿をそのまままとっているかのようです。
好きな方は 何枚も持っている、というのが納得できる着心地です。

現在、染めているのは力三氏の息子である陽介さん。 そして織るのは 陽介さんと奥様のみ。 数年前まで80歳を超えた織手さんが3人いらっしゃいましたが高齢でお亡くなりになったり、織ることが難しくなってしまい現在はいらっしゃいません。 希少性が高くなってしまい、価格も上がりました。 今ある在庫が無くなったら次は仕入れしないかもしれません。 最後の1反がじざいやの棚に静かに眠っています。 いつかは・・とお思いの方は会いにいらして下さい